子供の頃 家の敷地の角のところに、
1本の古い無花果の木があった。
祖母が元気だった頃は、
着物姿に下駄履きの出で立ちで、
器用に、その虫食い穴だらけの木の枝に
ひょいひょいと足をかけ、
朝一番に 熟れたての無花果をとってくれていた。
この季節になると
ザルに山盛りの無花果が 台所にいつもあった。
こぶりで甘い無花果を 飽きる程に食べて
それでも 忘れられそうになった無花果は
母がジャムにしていた記憶がある。
だいたい どんなに美味しいものでも
毎日食べると 嫌になったりして、
さほど 無花果好きの子供だった訳ではない・・・
かえって ジャムになる頃には
無花果を見るのも嫌な時もあったように思う。
なのに 先日 夢に
その無花果が出てきた。
少し こぶりで、朝露と密を蓄えた無花果。
まだ 無花果の木も元気で
沢山 実をつけていた頃の
幼い頃に食べていた甘い無花果の記憶・・・
その夢のせいで、
私にとっては その庭にあった無花果が
『幻の無花果』になってしまった。
幻の無花果
2006.06.22